非エンジニアのCodex入門・対面3時間|「AIに遠慮するな」持ち帰りの5ステップ【26/8/29 登壇レポート】
2026年8月29日の午後、東京・銀座の貸会議室で、STUDY HACKER共催の対面セミナー「非エンジニアのための Codex 入門」に、みやっち🧑💻が講師として登壇しました。8月26日に開催したオンライン版と同じ構成を、少人数・対面の3時間でもう一度通した回です。
この記事は、その日に実際に話した内容と、その場で起きたことのレポートです。参加された方の振り返り用に、そして参加できなかった経営者・個人事業主・士業・会社員の方が「自分の仕事ならどこから始めるか」を考える材料になるように残しておきます。
この対面セミナーで扱ったこと: ChatGPTのデスクトップアプリからCodex(コーデックス)に切り替え、自分の仕事に関係するファイルを渡して、成果物をその場で作らせるところまでを全員で通しました。ゴールは「Codexとは何か」を理解することではなく、参加者が自分の手で一度成功させて帰ることです。当日の締めのスライド「ということで」に、持ち帰りの5ステップがまとまっています。
オンライン版で時間切れになったパートを、対面では最後まで話せた
3日前の8月26日には、同じ内容をオンラインで開催していました。ただしオンライン版では、後半の「フィードバック」のパートが時間切れで流れています。この日はそこを完遂できたのが、いちばん大きな違いです。もうひとつ違ったのが進行の確実さで、各ステップで完了を目で確認しながら次へ進めました。みやっち🧑💻も当日、思わずこう口にしています。
「やっぱ対面いいですね。これ完走率100パーになりそうですね」
オンライン開催だと、チャットに「できてません」「来てません」と画面の状態を伝える声が流れる一方で、終了後の感想には「最高でした」と書かれる。手が止まっている人がどれくらいいるのか、主催側から本当には見えないのがオンラインの弱点でした。対面は、そこが全部見えます。とはいえ、これはオンラインでは無理という話ではありません。挙手確認やスクリーンショットの提出、区切りごとのチェックポイントを挟めば、オンラインでも詰まりは可視化できます。設計の問題です。
当日持ち帰ってもらった5ステップ
締めのスライドは「ということで」の一枚です。この5行が、この日の全部でした。
- ChatGPTデスクトップアプリでCodexに切り替える
- 作業に関連するコンテキストを集める
- 公式プロンプト4点セットで作業依頼する
- AIの成果物にフィードバックする
- 単発の成功を超えて仕組み化する
以下、この順にレポートします。行数を見れば分かるとおり、この日の中心は4つ目でした。
ステップ1: ChatGPTデスクトップアプリでCodexに切り替える
最初の一歩は、新しいツールを入れることではありません。すでに使っているChatGPTのデスクトップアプリで、モードをCodexに切り替えるだけです。この経路なら、ターミナル(黒い画面)を触る必要はありません。手順は以前に書いたCodexの始め方と同じ道筋なので、そちらを読んでいただければ追えます。無料プランでもCodex自体は触れますが、当日その場で分かったのは、プラグイン(外部アプリ連携)まで使うなら有料プランを前提にしたほうが安全だということでした(後述の「つまずいたところ」で触れます)。
ステップ2: 作業に関連するコンテキストを集める
2つ目は、依頼の前にAIへ渡す材料を集めることです。当日は、みやっち🧑💻が用意した4つのコンテキストファイルを配布し、それを読ませた状態からワークを始めました。ただし、この配布についてははっきり断りも入れています。
「僕の4つのコンテキストを配布したのである程度のクオリティになってるけど、こういうのを活用できるようになるには1、2ヶ月かかっちゃうかなと思います。なので、ちゃんと勉強しないとコンテキスト作れないんですけど、今回は成功体験をプレゼントしたと受け取ってください」
自分の仕事のコンテキストを自分で書けるようになるまでには、それなりの時間がかかる。当日の体験はそこまでの距離を縮めるために「先に成功体験を渡す」設計だった、という説明です。コンテキストの集め方そのものはコンテキストエンジニアリングにまとめてあります。
ステップ3: 公式プロンプト4点セットで作業依頼する
3つ目は、依頼文の形です。OpenAIがCodexのベストプラクティスとして示している4点セット——Goal(何を達成したいか)/Context(前提となる情報。どのファイル・資料・エラーが関係するか)/Constraints(守ってほしい制約)/Done when(どうなったら完了か)——をそのまま使います。中身は8月6日のオンライン勉強会レポートで詳しく書いたので繰り返しません。当日もここまでは全員が到達しました(途中で引っかかった段差については後述します)。差がつくのは、その先です。
ステップ4: AIの成果物にフィードバックする——この日いちばん時間を使ったところ
4点セットで依頼すると、成果物は出てきます。でも一発で満点は出ません。そこからどう直すかが、実は差がつくところです。この話をしながら、みやっち🧑💻は壇上で「もしかしたら今の話、今日一番有益だったかもしれない」と口にしています。スライドの見出しは、これでした。
実演で、実際に口にした「ケチ」
抽象論にしないために、当日はスライド10枚ぶんの修正を、その場で音声で流し込んで見せました。実際に口にしたのは、こんな言葉です。
- 「3ページ目は…回答の感じが気持ち悪いんで直してください」
- 「左右のチャンクの大きさがずれてるので揃えた方がいい」
- 「8ページ目は下が空いててしっくりこない。なんでこんな空いてんだろう」
- 「10ページ目はやりたいことは分かるんだけど鍵括弧が分かりづらいんで、開き括弧の下に下線とか付けた方がいいんじゃないですか」
きれいな指示ではありません。「気持ち悪い」「しっくりこない」といった、そのままでは指示書に書けない言葉が混ざっています。そのまま渡していい、というのがこの日の主張でした。
「わからない」「判断できない」も、そのまま渡していい
さらに一段踏み込んだのが、この一言です。「相手に『これちょっとわかんねえな』とか『僕では判断できないんだけど』とかもいい」。
人間の部下に対しては、こういう言い方は少しためらいます。指示が固まっていないことを見せるのは気が引けるからです。でもAI相手には、その遠慮が損になります。迷っている状態をそのまま渡せば、AIは選択肢を出してくるか、判断材料を揃えてくる。言語化しきれていない段階の情報こそ、渡す価値があるわけです。
締めの一言は「AIが作ったものにどんどんケチをつけていきましょう」でした。人間なら、朝の指示を2分後にひっくり返されるとやる気を失います。AIにはそれが関係ありません。この差が、そのまま手数の差になります。
下手な人ほど、指示を出しすぎている
「全部伝える」と対になる原則も、同じパートで話しました。「AI使うのが下手な人は、指示出しすぎっていうか、もうこれこれにしてくれみたいに言うんだけど」。伝えるべきなのはどういう意図で何をしたいかであって、どういう手順でやるかではない、という切り分けです。手段については、AIのほうが世界中のやり方を知っています。「こうやって、次にこうして」と手順まで指定してしまうと、AIが持っているベストプラクティスを自分の知識の範囲まで引きずり下ろすことになります。
つまり、意図・迷い・違和感は全部渡す。手順は渡しすぎない。「AIに遠慮するな」は、雑に指示しろという意味ではなく、渡す情報の種類を入れ替えろという話です。
なぜ音声入力なのか——「話してる感じ」が渡せるから
もうひとつ、この日にアップデートされた説明があります。音声入力を勧める理由が、速さではなくなったことです。
「タイピングだとどうしても自分が思ったことを打つことしかできない。『そうじゃないんだけどな』『いや、こうなんだけど』みたいな話してる感じが出せない」
キーボードで打つと、人は無意識に文章として整えてしまいます。整える過程で、迷いや違和感——さっき「渡す価値がある」と書いたもの——が削ぎ落ちる。音声入力は速度の道具ではなく、未整理のまま渡すための道具だ、というのがこの日の位置づけでした。
実務のコツも一言添えています。「友達にフィードバックするような感じで言ってたらいい感じになる」。音声入力そのものの選び方・使い方はAIの音声入力おすすめは2択にまとめてあります。
ステップ5: 単発の成功を超えて仕組み化する
5つ目は、その日の成功を明日も再現できる形にする話です。
当日使った比喩は「暴れ馬にハーネスを付ける」です。AIエージェントは放っておくと勝手に走ります。速いのはいいことですが、行き先を毎回自分で握り直すのは疲れる。だから手綱を4種類つけます。
- AGENTS.md — 毎回説明している前提をファイルに書いておく
- Skills(スキル) — 2回やった作業を手順として保存する
- サブエージェント — 作業の一部を専門担当に切り出す
- Hooks(フック) — 決まったタイミングで決まった処理を自動で走らせる
基礎編・応用編のチェックリストにしたのは、全部を一度にやる必要がないからです。まずはAGENTS.mdに前提を1行書くところから始めて、同じ作業を2回やったらスキルにする。この順で足していけば、その場限りの成功が、翌月も動く手順に変わっていきます。
会社そのものをAIに読ませる——AIカンパニーの中身を画面で公開
仕組み化の到達点として、みやっち🧑💻が自社で運用している「AIカンパニー」の中身を、その場でエディタ(Cursor)に映して見せました。
会社情報、代表者情報、ビジョン・ミッション、ターゲットユーザー、会員向け教材、マーケティング、財務。会社を成り立たせている情報が、AIが読める形で1つのフォルダの下に揃っています。ここまで来ると、AIへの依頼は「これをやって」の一言で済むようになります。前提をその都度説明しなくてよくなるからです。
ただし、ここも当日きちんと断っています。「これは一長一短ではできない。僕も最初は全く分からなくて、じゃあまずはYouTubeとか作ろうとか言って、徐々に足していって、ここまで来た」。最初から設計図があったわけではなく、発信のためのフォルダを1つ作って、動いたものから足していった結果が今の形です。ステップ5は、この積み上げの入口にあたります。
当日つまずいたところ
対面だと、手が止まる場所がはっきり見えます。当日出た引っかかりのうち、次回の案内に反映すると決めたのは次の3つです。
- 無料プランの方は、プラグイン(外部アプリ連携)からの情報取得が通らなかった。その場で挙手を取って確認できたので、次回からは事前案内に書きます。プラグインが使えるかどうかはプランや設定によって変わるので、業務で使うなら有料プランを前提にしておくのが安全です
- Macで
.mdファイルの既定アプリが別のアプリになっている。これは講師側の画面でも起きました。Macを使っていれば誰にでも起こりうる引っかかりです。ファイルを選んで command + I(情報を見る)を開き、「このアプリケーションで開く」でアプリを選んでから「すべてを変更…」をクリックすれば直ります(右クリックの「このアプリケーションで開く」はその1回だけの操作なので、既定は変わりません) - スライドの生成そのものに5〜10分かかる。ここは待ち時間として明示的に確保しました。生成中に画面を見つめて不安になるより、待つ時間だと分かっているほうが楽です
どれも技術的に難しい話ではありません。ですが、こういう小さな段差で人は止まります。対面でやる意味は、ここを一つずつ潰せることにあります。
参加者の感想から
少人数だったので、最後に一人ずつ感想を聞きました。個人が特定される内容は伏せて、印象に残ったものを紹介します。
- 「指示を入れるだけで勝手に全部書き換わってくるのがすごい」
- AI Crew受講生「一人でやってると想定外の出力で戸惑うのがネック。すぐ聞ける環境がありがたかった」
- AIツール初体験の参加者「自分で成果物を作れる体験ができた」
- AI Crew受講生「配布コンテキストを見て、こういう風に細かく書けばいいんだと分かった」
- AIツール初体験の参加者「ここまでできると思っていなかった」
- 「基本タイピングでやっていたが、音声の方がより明確に指示が出せると知れた」
- 「話しかけるような指示の出し方で成果物がブラッシュアップできる。コンテキストを作るのは大変そうだが、勉強して活かしたい」
目を引いたのは、音声入力に触れた方が複数いたことと、「指示を入れるだけで勝手に書き換わる」という直し方そのものに触れた方がいたことです。成果物が出てくる瞬間よりも、そこへ渡す側の話が残っている。ステップ4に時間を使った判断は、間違っていなかったようです。配布したコンテキストの粒度に触れた方も複数いて、「こういう風に細かく書けばいい」という気づきは、資料を実際に見せないと伝わらないのだと分かりました。
質疑応答から
セキュリティ・個人情報はどう考えるか
まず、法人向けプランを使えば、入力した内容の取り扱いについて一定の担保があります(契約するプランの規約を確認するのが前提です)。そのうえで、顧客の個人情報をどこまで扱えるかは、顧客との契約内容によって変わります。マスキングして渡し、戻ってきた結果を元に戻すという実務的なやり方もあります。
当日お伝えしたのは、可否を一律に決めるよりまず社内で議論の俎上に載せることでした。「なんとなく怖い」で止まっているのと、「この業務のここまでは任せる」と決めてあるのとでは、動ける範囲がまるで違います。
なお、実データの取り扱いは契約内容・利用規約・社内規定によって判断が変わります。この記事は法的助言ではありませんので、実際の運用は顧問弁護士・情報システム担当など専門家にご確認ください。個人情報を含まない業務から始める考え方はAIに個人情報はどこまで入力していいかに書いています。
同じ指示で、毎回同じ結果になるのか
なりません。AIは確率で答えを組み立てるので、同じ指示でも出力が毎回同じになるとは限りません。ただし、それは「制御できない」という意味ではありません。ステップ5のハーネス——AGENTS.mdに前提を書く、手順をスキルにする——を効かせるほど、出力のばらつきは狭まります。再現性は、指示文を磨くことだけに頼らず、前提と手順をファイルに固定することで上がります。
締めくくりに:一度自分の手で成功させると、次が始まる
この日の設計思想は、最後まで一貫していました。Codexの説明を増やすことではなく、参加者が自分の手で一度成功させて帰ることです。そのために配布コンテキストという下駄を履かせ、待ち時間まで含めて進捗を見ながら進め、最後に、ここから先は自分で積み上げていく話をしました。成功体験が先で、理解は後からついてきます。
その先で効いてくるのがステップ4です。出てきたものにケチをつける。迷いも不明点も、思考の途中経過も全部渡す。手順は渡しすぎない。この往復ができるようになると、AIの成果物は「まあまあ」から「使える」に変わります。
Codexを自分の仕事にどう刺すかを一緒に考えるところは、無料セミナーでも扱っています。まず無料セミナーでお会いしましょう。




