Claude Fable 5定額終了へ|AIの仕事術を15ファイルに移植したら、別のAIに「半分無駄」と査定された【実践記録】
使っているAIモデルが使えなくなっても、仕事の質は保てます。AIの強さの大部分は、モデルそのものではなくファイルと仕組みに移せるからです。
AIモデル依存リスクとは: 特定のAIモデル(例: Claude Fable 5)の提供条件が変わること(値上げ・従量課金化・提供終了)で、それまでのAI活用の品質や自動化が崩れてしまうリスクのことです。対策の基本は、AIへの指示・判断基準・品質基準を会話の中ではなくファイルに書き出し、モデルが替わっても同じ基準で動ける状態にしておくことです。
Claude Fable 5がサブスク定額の範囲(週次利用上限の最大50%まで)で使えるのは、当初2026年7月7日まででした(前回の記事で書いた期限の話です)。その後、Anthropic公式Xの発表で7月12日まで延長されましたが、猶予は数日です。期限を過ぎると、超過分は使った分だけ課金される方式になり、今までと同じ感覚では使い続けられません。
そこでみやっち🧑💻は、当初の期限が来たタイミングでFable 5自身に「自分の仕事術を後継モデルへ引き継ぐ準備」をさせるという、少し不思議な作業をしました。この記事はその実践記録です。うまくいった話だけでなく、作った成果物を別のAIに査定させたら半分無駄と言われた失敗談まで、そのまま書きます。
モデルが替わると、何が失われて何が残るのか
まず前提の整理です。みやっち🧑💻の実感では、AI活用の「強さ」は3層に分かれます。
- モデルの地力: 一発の推論の深さ、曖昧な指示を察する力。これはモデルが替われば変わります(正直、落ちるものは落ちます)
- 判断の癖: どこまで自分で進めてどこで確認するか、完了と言う前に検証するか。体感的な「仕事ができるAI」の印象は、実はここが大部分です
- 環境の仕組み: 品質チェックの仕組み、情報の置き場のルール、危険な操作を止める設定
このうち1は諦める。2はファイルに書き出して移植する。3はそもそもモデルと無関係に動くよう作る。これが今回の作戦でした。
やったこと1: AIの「働き方」を15ファイルに言語化する
Fable 5に、自分自身の働き方を説明可能な範囲で言語化させました。出来上がったのは15個のMarkdownファイルです。中身は例えばこんな内容です。
- 行動原理: 「結論から書く」「ファイルやログなど一次情報を見てから言う。見ていないことは見ていないと言う」「元に戻せる作業は確認なしで進め、削除・公開・送信など戻せない操作の前だけ止まる」
- 完成の定義: 「実際に動かして確認した+相手がそのまま使える+次にやることが明確」の3つが揃うまで完成と言わない
- 依頼の型: 人間側がAIに渡す依頼文のテンプレート9種(目的・合格条件・自走してよい範囲を先に固定する型など)
- 品質チェックリスト: SNS投稿・教材・レポートなど、成果物の種類別の合格基準
このうち最重要の10行だけを、AIが毎回のセッション開始時に自動で読み込むファイル(CLAUDE.md。社内憲法のようなものです)に常設しました。こうすると、モデルが何に替わっても、毎セッション必ずこの判断基準が注入されます。新入社員が誰に交代しても、就業規則と業務マニュアルは同じものを読む、という状態です。
やったこと2: 品質は「門番」に守らせる(モデルが弱くなっても品質が落ちない構造)
みやっち🧑💻の環境では、SNS投稿やブログ記事は「書き役のAI」と「採点役のAI」を分けています(レビュー役AIを分ける考え方は以前書きました)。採点役の合格基準は、AIの記憶ではなくファイルに明文化してあります。
この構造の良いところは、モデルの性能が落ちたときに起きるのが「品質の低下」ではなく「差し戻しの増加」になることです。書き役が弱くなれば不合格が増えて書き直しに時間がかかりますが、門番の基準は変わらないので、世に出るものの品質は下がりません。劣化を品質ではなく速度で受け止める、と言い換えてもいいです。
あわせて、環境の総点検もしました。読み取り専用の調査AIを9体並列で走らせ(約88万トークン・250回のツール実行)、設定の穴を3件発見しています。使い終わった外部サービスのAPIキーが許可設定に残っていた(すでに失効していることを確認して削除)、秘密情報ファイルの読み取り禁止ルールに抜け道があった(ガードを強化し、25ケースのテストで検証)、といった地味な話ですが、モデルが替わる前の大掃除として効きました。強いモデルほど自信を持って動くので、事故を止める柵はモデルの善意ではなく設定で作っておく必要があります。
やったこと3: 出来上がったものを、別のAIに「潰させる」
ここが今回いちばんの学びです。出来上がった移植パックについて、作った本人(Fable 5)に「良い出来か?」と聞いても意味がありません。AIは人間と同じで、自分の成果物への評価が甘いからです。
そこで、まっさらな別の文脈のAIを2体立てました。1体は「これを作った甲斐はなかった、という論拠を全力で組み立てろ」という辛口批評役。もう1体は費用対効果を淡々と査定する中立役です。
結果、辛口側の判定は「半分無駄」でした。
- 「規範の中身が複数ファイルに重複コピーされていて、自分で決めた”情報は1か所に”のルールに違反している」
- 「すぐ古くなる時点レポートを、腐らない設計のはずの配布物に同梱している」
……いずれも事実に基づいた正しい指摘だったので、受け入れてその場で直しました。一方で中立役の判定は「条件付きで元は取れる」。価値が高いのは15ファイルのうち3〜4本に集中している、という査定でした。作った側としては耳が痛い数字ですが、おかげで「どのファイルが本当に効くのか」の優先順位がはっきりしました。
この「大事な成果物は、作ったAIとは別の文脈のAIにレビューさせる」という手は、AIの仕事全般に使えます。同じチャットの中で「これで大丈夫?」と聞くと、AIは自分の直前の出力に引きずられます。新しいチャットを開いて、成果物だけを渡して「粗探しをして」と頼む。それだけで、忖度のない指摘が返ってくる確率が大きく上がります。
読者がまず真似するなら、この3つから
みやっち🧑💻の環境の全部を再現する必要はありません。まず効く順に3つだけ挙げます。
- AIに毎回言っている指示を、1つのファイルに書き出す。「うちの事業はこう」「トーンはこう」「これはやらないで」。書き出した瞬間から、それはモデルが替わっても使い回せる資産になります
- 依頼するとき、合格条件を1文添える。「◯◯を直して。△△になっていたら合格」。モデルの察する力に頼る部分が減るほど、モデル交代のダメージは小さくなります
- 大事な成果物は、別のチャットでダブルチェックさせる。作らせたAIに自己採点させない。これは今日から無料でできます
もっと本格的に真似したい方向けに、みやっち🧑💻が今回の移植で実際に使ったプロンプトの全文(環境診断から仕事術の言語化・他モデルへの引き継ぎ設計まで)をnoteで無料公開しています。コピペしてそのまま自分のClaude Codeで試せます。
AIの強さは「腕の良い職人」半分、「よくできた工場」半分です。職人はいつか交代します。でも、判断基準をファイルにし、品質の門番を仕組みにしておけば、工場は残ります。モデルに惚れ込むほど、モデルに依存しない作りにしておく。これが、Fable 5と一番濃く仕事をしたみやっち🧑💻が、定額の締め切りを前に出した結論です。
こうした「特定のモデルに依存しないAIの仕組み作り」は、AI Crewの講座で実際の画面を見ながら一緒に手を動かして身につけられます。まず無料セミナーでお会いしましょう。