MVPとは|「1機能だけ」で出す開発の考え方と、ピボットの意味【2週間かけて出した自社サービスの実例】

結論から言います。MVPは「小さく作った未完成品」ではありません。これだけは絶対に使ってもらえるという機能を1つだけ決めて、それだけで世に出す最初の版です。機能を盛り込みすぎて完成しない業務アプリや自作サービスは、たいてい、この1つを決める前に作り始めています。

MVPとは MVP(Minimum Viable Product)とは、利用者に価値を届けられる最小限の機能だけを持たせて、最初に世に出す製品のことです。日本語では「実用最小限の製品」と訳されます。MVPを出す目的は完成度を見せることではなく、実際に使ってもらい、その反応から「本当に必要とされているか」を確かめることにあります。

なお「MVP」には、スポーツの最優秀選手(Most Valuable Player)や医療分野の略語など、別の意味もあります。この記事で扱うのは、ビジネス・開発の用語としてのMVPと、セットで語られる「ピボット」です。

MVPとは「欲張らずに1機能で出す」最初の版

MVPの3文字は、それぞれこう読むと分かりやすくなります。

文字英語意味
MMinimum最小限。機能は削れるだけ削る
VViable実用に耐える。削っても、使う人の用事は1つ片付く
PProduct製品。試しに触ってもらう試作ではなく、実際の用事で使ってもらうもの

大事なのは真ん中のViableです。削りすぎて何の役にも立たないものはMVPではありません。逆に、あれもこれも付けて完成を待たせるものもMVPではありません。使う人の用事を1つ確実に片付ける、その機能だけを残すのがMVPです。一般的な定義では機能の数までは決まっていませんが、この記事では「1機能」を目安にします。

身近な例で言えば、ToDoアプリのMVPはタスクの管理だけです。カレンダーとの連携や通知、チームでの共有は、タスク管理が使われると分かってから足せば間に合います。

自社のAIチャット作成サービスのMVPは「チャットボットが作れるだけ」

みやっち🧑‍💻が自社で立ち上げたAIチャット作成サービス(AIチャットつくーる)も、この考え方で出しています。MVPとして決めたのは、チャットボットが作れる、という1点だけです。

「これだけは絶対に使ってもらえる」ものが何かを先に決めて、それ以外は後回しにする、という順番です。このサービスは、2週間かけて出しています。

作っていると、あれもこれも足したくなります。ただ、機能を足していくほど公開は遠のき、公開が遠のくほど、使う人の反応を知るのも遅れます。1機能で出すのは手抜きではなく、反応を早く受け取るための順番です。

出して使われなかったら、それも1つの答え

MVPを出すと、結果は2つに分かれます。使われるか、使われないかです。

使われれば、次に足す機能を、使っている人の様子を見ながら決められます。使われなければ、「そもそも必要とされていなかった」と分かります。どちらも、作り込んでから出していたら、ずっと後になるまで分からなかったことです。

MVPの本当の成果物は、製品ではなく、この「分かったこと」のほうです。そして、使われなかったと分かったときに打つ手が、次に説明するピボットです。

作る前に「作ったのに使われない」を減らすための問題の絞り込み方は、AI開発の要件定義の記事にまとめています。MVPはその先、実際に出して確かめる段階の話です。

ピボットとは|軸足を残して、見せ方を変えること

ピボットとは ビジネスでのピボットとは、事業や製品の方向を、それまでに分かったことを踏まえて切り替えることです。すべてを捨ててやり直すのではなく、変えない部分を残したまま、狙う相手や見せ方、提供の仕方を変えます。

言葉の由来は、バスケットボールのピボットと同じです。バスケでは、片足を床に着けたまま、もう片方の足を動かして向きを変えます。軸足(何のためのものか)は動かさず、向きと見せ方を変える。これがビジネスのピボットの意味です。

ピボットと、ゼロからの作り直しの違いも、この軸足で見分けられます。軸足まで動かすなら、それは方向転換ではなく、別のものを作り直すことになります。

自社サービスのピボット例|「GPTsの代わり」は変えず、対話で作る機能を足した

AIチャットつくーるの軸足は「GPTsの代わり」です。GPTsの代わりになるものを作る、というところは最初から外していません。

変えたのは、入口の見せ方です。自分でナレッジ(AIに持たせる資料や知識)を用意できる人ばかりではありません。そこで、AIと対話しながら自分専用のAI(マイAI)を作れる機能を足しました。みやっち🧑‍💻の言葉で言えば、「いかに敷居を下げるか」です。

軸足は同じまま、狙う相手を、自分でナレッジを用意できない人まで広げています。ピボットは事業の方向を切り替える言葉ですが、このくらいの小さな切り替えから始めて構いません。

置き換えるときは「前にできなかった体験」を1つ足す

すでにある仕組みを自作のアプリへ置き換えるときも、MVPの考え方が使えます。ここで絞る1機能は、前の仕組みではできなかった体験です。同じものを別の場所へ移すだけにしない、ということです。

みやっち🧑‍💻の例では、業務を可視化するためのAIを、GPTsから自社サービスへ移しました。

  • 移す前: GPTsとの対話で出てきた結果を、使う人が業務可視化シートへ手で転記する形だった。本人いわく「前時代的」なやり方
  • 移した後: Google連携を済ませて、書き込み先のスプレッドシートとタブを選んでおくと、AIの質問に答えるたびに、確定した内容が14項目に整理されてシートへ自動で保存される

「リプレイス(置き換え)なのに、GPTsではできなかったことを提供する姿勢を見せると、プロダクトの価値が上がる」というのが、みやっち🧑‍💻の考え方です。全部を良くしようとせず、足す体験を1つに絞ります。

このシートへの自動保存を作るときに決めたこと(1会話を1行に結びつける、人が直したセルは上書きしない、など)はGPTsからスプレッドシートに書き込む連携の決めごとにまとめています。

自分の業務アプリにMVPを当てはめる手順

業務アプリを自作するときは、次の順番で進めると、欲張らずに1機能で出せます。

  1. 今の手順を書き出す。紙・転記・郵送など、今どうやっているかをそのまま並べる
  2. 絶対に使ってもらえる1機能を決める。今の手順のうち、いちばん手間がかかっている1か所を楽にするものを選ぶ
  3. 今の手順を大きく変えずに、その1機能だけを入れる。使う人が「同じようにやっていたら楽になった」と感じる形にする
  4. 出して、使われるかを見る。使われなければ、軸足を残して見せ方を変える(ピボット)
  5. 使われたら、次の1機能を足す

3の「大きく変えない」は、業務アプリならではのポイントです。紙を書いている現場の人は、紙をなくしたいとは思っていないことがよくあります。新しい手順を覚えるのが面倒だからです。いきなり新しい仕組みを入れるより、今の手順のまま楽になる体験を先に届けたほうが、使われるMVPになります。

もう1つ、引き継ぎと仕組みの変更を同時にしないことも大切です。担当を引き継ぐタイミングで仕組みまで変えると、覚えることが二重になって、どちらも定着しにくくなります。まず今の手順のまま引き継ぎ、そのあとで変えます。

みやっち🧑‍💻が会計事務所とのやり取りでいちばん大きく変わったと感じた置き換えも、この形でした。会計事務所へ毎月郵送していた書類を、スクリーンショットを撮ってDropboxに入れる形に変えたのです。会計ソフトに文字読み取りの機能が標準で付いているので、それで回ります。書類の原本はこちらで保管する形になるので、先方にとっても保管用の棚を埋めなくて済む利点があります。まずはスクリーンショットで回収するところから、というくらいの小ささで十分です。

周りを巻き込むときに、自分だけ気合いが入りすぎていると感じたら、関係者の話を一度何も言わずに全部聞いてから、1つずつ提案していきます。AI活用を社内に広める順番そのものはAIの社内展開の記事で扱っています。

MVPの先にある判断は、別の記事で

MVPを出したあとに待っている判断は、段階ごとに違います。この記事はMVPとピボットの意味を担当しているので、その先は次の記事へ渡します。

よくある質問

MVPとプロトタイプ(試作品)の違いは?

プロトタイプは、作り方や見た目、使い勝手を確かめるための試作品です。何人かに触ってもらって意見を聞くことはあっても、実際の仕事で使い続けてもらう前提のものではありません。MVPは、実際の仕事の中で使ってもらい、使われ続けるかどうかを確かめるための製品です。試しに触ってもらう段階か、実際の用事で使ってもらう段階か、が分かれ目です。

MVPは何機能まで入れていい?

目安は1つです。「これだけは絶対に使ってもらえる」機能を1つ決め、それ以外は使われると分かってから足します。ToDoアプリならタスク管理だけで、カレンダー連携は後回しで構いません。

ピボットは失敗の言い換えではないのか?

ピボットは、出して分かったことを使って向きを変える判断です。軸足(何のためのものか)を残したまま見せ方や届け方を変えるので、ゼロからのやり直しとは違います。

1機能で出して直す回転は、自分で作れると回しやすい

MVPとピボットは、言葉を知っているだけでは回りません。1機能で出して、反応を見て、向きを変えて、また出す。この回転を自分の手で回せるときに初めて意味を持ちます。

外注で作ると、1回の修正ごとに見積もりと待ち時間が挟まりやすいので、「まず1機能で出して様子を見る」がやりにくくなります。汎用のSaaSは多くの会社に共通する業務に合わせて作られているので、自分の現場の手順に合わせて1か所だけ楽にする、という小さな置き換えは苦手なことがあります。Claude Code・Codexで自分の業務アプリを自分で作れるようになると、今日思いついた1機能を出し、使われ方を見て明日直す、という進め方が自分の事業の中で回り始めます。

AI Crewでは、経営者・個人事業主・士業の方が、自分の業務アプリをClaude Code・Codexで作って動かすところまで、みやっち🧑‍💻が受講生と一緒に進めています。何を最初の1機能にするかを決めたい方は、まず無料セミナーでお会いしましょう。

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